Social Good Blog Written by 平畑隆寛@社会福祉士

【自筆証書遺言書保管制度】遺言書の書き方と保管方法をわかりやすく解説【遺言書は家族に対するラブレター】

social worker

こんにちは。社会福祉士のタカヒロです。

今回は「遺言書の書き方と保管方法をわかりやすく解説」というテーマでお伝えします。

こんな方に読んでもらいたい

タイトル通り、日本は多死社会に向かっています。悲しいですが超高齢社会の構図上、仕方のないこと。そこで死を嘆くだけでなく、「死に対して今なにができるか」を考えてみようと思いました。それが遺言書です。

デリケートなテーマでもありますが、このような方に読んでもらいたいです。

  • 遺言書について少し考えてみたい
  • 身近に多死社会を感じることがある
  • 遺言書によって何が変わるのか知りたい

上記の通り。皆さんと遺言書について紐解いていきたいと思います。

記事の信頼性


地域包括支援センターに勤務していることから、今すぐお亡くなりになる方と関わることは少ないですが、じっくりと将来のことや家族のことについて話す機会はあります。その中で、僕が遺言書について感じたことをお伝えします。

もくじ

  1. 遺遺言書の書き方と保管方法をわかりやすく解説
  2. 遺言書に関連するトラブル
  3. 遺言書の種類【2つあります】
  4. 遺言書の保管方法
  5. まとめ

※この記事は15分程度で読むことができます。
※本記事は高齢者サロンで発表するスライドをもとに文章化しましたので、その点だけご了承ください。

遺言書の書き方と保管方法をわかりやすく解説

先日、こんなツートをしました。

記事の冒頭でもお伝えしたとおり、今後は多死社会まっしぐらです。その中でソーシャルワーカーとして何ができるか、考えてみたのが「遺言書の講座」でした。

ほとんどの人間が、「死」から遠ざける生活を送ろうとします。これは当然ですね。死は怖いものです。

しかし人間である以上、死を避けることはできない。かといって真正面から受け入れることもできない。そこで「遺言書」というかたちで、自身の人生を振り返るきっかけにしてもらいたいと考えました。

遺言書を作成することで、2つのメリットが考えられます。

  • 理由①:相続をめぐる紛争防止
  • 理由②:自分の希望をたくす

「私の子どもたちは大丈夫」と言っても、相続による家族間トラブルは多いです。遺言書がなければ「法定相続手続き」になりますが、ご本人の意向は反映されません。自分の希望を託すためにも、遺言書は「最期の手紙」として活用できます。

多死社会に向けたデータ

まずは、遺言書に関連するデータを見ていきます。

厚労省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」には、下記データがありました。

2040年には166万人の方が亡くなる推移です。全て高齢者が亡くなるわけではないですが、高齢者人口の増加は影響していますね。

遺言書の作成件数

これだけ多死社会に向かっている日本ですが、遺言書の作成件数はどの程度か調べてみました。

公正証書遺言(令和2年) 9万7700件
自筆証書遺言(平成28年) 1万7205件(あくまで検認件数であり、全体の13%程度とも言われる)

上記の通り。

見ていただきたい箇所は「自筆証書遺言」の件数。検認とは、家庭裁判所で遺言書の有効性などを確認することです。

実際には検認することなく遺族間で解決することも多く、自筆証書遺言の作成件数は「13万件」とも推計されます。

遺言書に関連するトラブル


ここでは遺言書に関連するトラブルを紹介します。

トラブルを事前に知っておくことで、遺言書の必要性や作成後のトラブルに備えることができます。一緒に勉強していく気持ちで読んでもらえると幸いです。

遺言書に関連するトラブル

遺言書に関連するトラブルは大きく分けて2つ。

  • ①:遺言書がなかったことによるトラブル
  • ②:遺言書作成後のトラブル

それぞれ解説します。

遺言書がなかったことによるトラブル

下記の事例をご覧ください。

母が亡くなり、土地と預貯金が遺産として残りました。すでに父は亡くなっており、息子2人で相続することになりました。
 
遺言書がないので、遺産分割協議を実施。そこでもうまくいかず、家庭裁判所の調停や審判を利用することになりました。この時点で息子2人の関係性は悪くなり、ついには裁判まで進むことになりました。
 
きっと天国の父母も、悲しみながら息子2人の紛争をみていることと思います。

極端な事例ですが、僕が包括職員として関わった中には、同じようなトラブルを体験した方がいました。それまで兄弟仲が良かったのに、お金などの財産が絡んでくると感情のもつれが顕在化する場合があります。

遺言書作成後のトラブル

遺言書を書いていても、2つのトラブルが考えられます。

  • 相続人に発見されない
  • 改ざんされる場合がある

せっかく書いた遺言書も、見つからず、さらに改ざんされると報われません。

これには2つとも、保管場所の問題があります。適切な場所に保管することで、上記のトラブルを防ぐことが可能です。

遺言書の種類【2つあります】


遺言書の作成件数でも上げていましたが、遺言書には種類が2つあります。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言

上記の通り。それぞれ解説します。

公正証書遺言とは

法律専門家である公証人が関与し、2名以上の証人が立ち会って作成します。公証人は遺言の有効性や内容の助言を行うことができます。

メリットとデメリットは下記の通り。

メリット

  • 助言を受けながら作成できるので迷わない
  • 財産が多くても公証人と確認しながら書ける
  • 公証人が出張できるので場所は自宅でも施設でも可能

デメリット

  • 作成に手数料がかかる
  • 手数料2~5万円に加え出張費も加算
  • 第三者(公証人)が立ち会うので想いまでは書きづらい

自筆証書遺言

遺言者本人が自筆にて作成します。日付、氏名を自筆すれば遺言書として有効なので、自由に書くことができます。

メリットとデメリットは下記の通り。

メリット

  • 一人で自由に書ける
  • 葬儀や納骨などの希望を書いたり、家族への感謝(ラブレター)を書いたりもできる
  • 費用はかからない

デメリット

  • 書き方がわからない
  • 保管場所に困る
  • 見つけてもらえるか不安

それぞれの遺言をまとめると、下記の通り。

公正証書遺言 公証人立ち合いで間違いなく書ける
費用は5万円前後かかるかも
公証人がいるから、自由な内容にはなりにくい
自筆証書遺言 日付、氏名を自筆できれば自由に書ける
費用は無料
保管も自由だから、紛失や改ざんの心配がある

結論は、自筆証書遺言が書きやすいです。想いも残すことができますし。

とはいえ、自筆証書遺言のデメリットである「発見されない」と「改ざんのリスク」に対して、問題は残ったままですね。それを解決できるのが、「自筆証書遺言書保管制度」です。

ワンポイント:遺言書を見つけたら、家庭裁判所に持って行きましょう。故意に開封すると、5万円以下の罰金を受ける場合があります。

遺言書の保管方法


2020年7月10日より、民法改正によって「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。施行目的は、遺言者の最終意思表示や相続手続きの円滑化を図ることとしています。

保管の流れ

保管手続きを大まかに伝えると、下記の通りです。

  1. 自筆証書遺言書を作成
  2. 法務局へ保管手続きの予約
  3. 法務局へ保管の申請
  4. 保管証を受け取る

主に「自筆証書遺言書を作成」と「法務局へ保管の申請」が理解できると、保管制度の概要はつかめると思います。

自筆証書遺言書を作成

遺言書のサンプル画像は下記よりご覧ください。

ポイントは下記を参照ください。

・「〇年〇月吉日」は不可
・押印はシャチハタ不可
・戸籍どおりに記載
・ボールペンで記載
・用紙はA4サイズ
・裏には記載しない
・財産が多い場合は「財産目録」を添付する

上記の通り。

実際に法務局で聞いた話ですが、サンプル画像のような構成にすることはないとのことです。とにかく「日付」と「戸籍通りの氏名」が自筆で書かれていれば、民法上、遺言書として成立します。

また保管制度を利用する際、法務局の担当者より簡単なアドバイスをもらえるので、肩に力を入れずリラックスした状態で書かれることをおすすめします。

法務局へ保管の申請

申請の場所は法務局です。詳しくは法務省の「自筆証書遺言書保管制度」をご覧ください。

持参するものは下記の通り。

  • 遺言書
  • 申請書
  • 住民票(本籍の記載のあるもの)
  • 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
  • 手数料(1通:3,900円)

※遺言書と申請書は、事前に作成しておく必要があります。

遺言者が亡くなったあと

遺言者が亡くなったあと、相続人が行える行為として3つあります。

  • 遺言書が預けられているか確認できる
  • 遺言書の内容証明を取得できる
  • 遺言書を閲覧できる

上記の通り。

相続人は、生前遺言者が「遺言を書いておこうか」とか「財産をどう分けようか」など、遺言書の作成を検討しているようなことを聞いた場合は、一度法務局へ確認してはどうでしょうか。

ワンポイント:亡くなられた後、相続人へ保管されていることをお知らせします(1名のみ)。

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この記事のまとめです。

遺言書は2つ種類があります。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言

それぞれの特徴は下記の通り。

公正証書遺言 公証人立ち合いで間違いなく書ける
費用は5万円前後かかるかも
公証人がいるから、自由な内容にはなりにくい
自筆証書遺言 日付、氏名を自筆できれば自由に書ける
費用は無料
保管も自由だから、紛失や改ざんの心配がある

結論、「自筆証書遺言」が書きやすいし、自身の想いも伝えやすいです。さらに、「自筆証書遺言書保管制度」を活用すれば、紛失や改ざんの問題も解決できます。

今回の記事は発表用のスライドをもとに書きましたが、補足説明としてさまざまな資料を参考にしました。以前までは「遺言書は財産を持っている人が書くもの」と言われてきましたが、現代では自身の意志を表示することもつながります。

僕たちソーシャルワーカーは、これからますます拡大する多死社会に対して、いかにクライエントの意思決定や表出を支援できるかも問われる時代です。そのことも含めて、この記事が少しでも皆さんの業務へ役に立つことを願っています。

最後に、この記事で参考にした書籍を紹介します。どれも良書でした。気になる方は覗いてみてください。

では、今回はこのへんで😌