インテーク面接はソーシャルワークの醍醐味【重要なのはクライエントをたらい回しにしないこと】
こんにちは。社会福祉士のタカヒロです。
今回は「インテーク面接はソーシャルワークの醍醐味」というタイトルでお伝えします。
記事を読んで解決できること
読み終えたあとに3つ解決できます。
- インテーク面接の具体的な方法
- 他機関へつなぐ方法
- インテーク面接の奥深さ
上記の通り。
記事の信頼性
僕は社会福祉士として8年経ちました。経験年数としてはまだまだ短いですが、さまざまな経験をさせてもらい、現在は県社会福祉士会副会長や基礎研修講師をしています。地域包括支援センターでの実践と講師活動による若干の学識はあるので、ある程度信頼性を持っています。
もくじ
※この記事は15分程度で読むことができます。
インテーク面接はソーシャルワークの醍醐味
先日こんなツイートをしました
地域包括支援センターは原則65歳以上の高齢者を対象としている。しかし40や50代の相談も珍しくない。大事なのはインテークで断らないこと。たらい回しにしないためにも、一旦聞いて適正な相談先に確実につなぐ。相談するクライエントの気持ちを鑑み「相談してよかった」と思われる支援をしよう。
— タカヒロ@社会福祉士×ブログ (@ta_hi_ro_30) April 4, 2022
上記の通り。
地域包括支援センターにはさまざまな相談が来ます。決して65歳以上の方ばかりではありません。
とはいえ、基本的には65歳以上を対象にしている地域包括支援センター。対象外の相談が来た際、何でもかんでも引き受けていると相談窓口がパンクし、他の事業にも支障が出てきます。
そこでインテーク面接が必要になるわけですね。
インテーク面接とは
そもそもインテーク面接とは、いったいなんでしょう。
日本社会福祉士会が発行している「基礎研修テキスト上巻」には、下記のように書かれています。
援助の出発点にとなる局面であり、インテーク(intake:受理、受付)と呼ばれる。援助者であるソーシャルワーカーが、サービスを利用しようとする人やその家族などと出会い、ともに問題に向き合い、その解決に向けて取り組んでいく関係(援助関係)を樹立しようとする段階である。その後の援助活動の展開を左右する重要な局面としてとらえられる。
上記の通り。
さらに奥川幸子氏の「身体知と言語」では、インテーク面接を下記のようにとらえています。
「初回インタビュー」は、対人援助職者の専門や配置された場によって「インテーク面接」「アセスメント面接」「アナムネーゼ」「問診」など、その呼び方は異なります。しかし、その後のケアの過程で生じるクライアントとのあいだの意思の疎通も含め、クライアントの訴えや彼らが置かれている状況の理解のためには「援助面接」が要求され、いぜれも「相互交流」を基盤としています。
うーん、奥が深いです。気になる方は下記カードから購入できます。僕にとってソーシャルワークのバイブルです。
相談されやすい環境づくりが大事
主語をソーシャルワーカーに置くと、「相談種類の選別」とか「緊急性の把握」などになると思います。しかし僕たちソーシャルワーカーは、クライエントに向けて仕事をする職種。主語をクライエントに置いてインテーク面接を考えると、下記の通りになリます。
- 丁寧に聞いてくれる
- 問題を整理してくれる
- 必要な情報や他機関につないでくれる
上記の通り。
クライエントが相談しやすい面接や環境が大事ですね。クライエントが「相談してよかった」と思ってもらえるような対応が求められます。
インテーク面接で断られた人の悲劇
さて、ここではインテーク面接がうまくいかず、クライエントが悲劇に見舞われた事例を紹介します。
注意:あくまで架空の事例です。
50歳女性。一人暮らし。うつのため、近隣の精神科へ受診している。将来への不安から不眠および食欲低下。主治医が地域包括支援センターを紹介し、本人一人で来所した。地域包括支援センター職員(B氏)は、本人の主訴を聞いたあと下記のやり取りを行なった。 B氏:「ここは65歳以上の相談窓口です。介護保険に該当する病気もないそうですし、他の相談窓口をお薦めします」 本人:「そうなんですか。先生から紹介してもらって、話を聞いてくれると聞いて来たんですが…」 B氏:「話は聞けますが、具体的な相談に乗ることは制度上難しいです」 本人:「わかりました…。では、どこに相談したらいいですか?」 B氏:「うーん。受診してる精神科にはソーシャルワーカーがいるので、その方に相談されてはどうでしょう?」 本人:「え…。また受診している病院に戻ったほうがいいですか?」 B氏:「じゃ、保健所とか市の専用窓口もありますから、そこに相談するのはどうでしょう?これが連絡先です」 本人:「わかりました…。電話してみます」 その後、本人はうつが増悪し、ほとんど外出することがなくなった。食事も摂らない日が続き、何日も連絡が取れない兄が心配して自宅を訪ねたところ、息も絶え絶えの状態で発見。救急搬送で一命は取り留めたものの一人暮らしは難しくなり、50代という若さで療養型病院へ入院となった。
少しオーバーな事例ですが、全くあり得ない事例でもありません。
事例の本人は、勇気を出して地域包括支援センターを訪ねたと思います。その気持ちや不安に対して、B氏は誠実に対応したのでしょうか。さらに、他機関へつなぐ際の方法は適切だったでしょうか。疑問が多く残る事例だと思います。
インテーク面接は立体的に見ること
上記の事例においてB氏は、ニーズを「点」でしかとらえていませんでした。
事例をもとに、ニーズを立体的にとらえることを考えてみました。
- 精神科病院ではどんな治療および関わりをしていたのか
- 本人の将来への不安というのは何か
- 不安の浄化(カタルシス)のためには何が必要か
上記の通り。
まずは相談に来られた本人の気持ちに寄り添い、労いながら丁寧に主訴を紐解く作業が必要です。
インテーク面接の方法
インテーク面接において、「基礎研修テキスト上巻」より抜粋します。
利用者と援助者とが信頼関係に基づく援助関係を構築することは、利用者への生活支援活動を展開する基盤として非常に重要である。そして、援助関係の構築には、両者のあいだに確かなコミュニケーションがあることが前提になる。
さらにもう一つ。
援助者には、たとえば様々なサービスや資源に関する情報を日常的な言葉でわかりやすく説明したり、また利用者本人や家族に反応を見ながら、必要な情報を的確に伝えるなどの努力が必要である。それと同時に相手からの訴えやメッセージ(たとえそれが無言のものであっても)を援助者が傾聴し、受け止めることから、利用者(クライエント)への理解が始まる。
インテーク面接での心掛け
上記の内容からインテーク面接を解釈すると、下記の通りです。
- クライエントにとってくつろげる環境設定(援助関係)
- 「事実」と「感情」を分けながら聴くこと
- クライエントから自然に言葉が流れてくるような傾聴
- 心理的・精神的サポートを心がける
- 自己決定や強みを阻害しない情報提供を行う
上記の通り。
インテーク面接って奥が深いです。しかし初回の面接でこれらを心掛けて行うと、クライエントの「相談してよかった」を引き出すことにつながります。
電話によるインテーク面接
インテーク面接は対面ばかりではありません。そこで電話の場合について考えてみます。電話の場合相手の表情が見えないので、下記の特徴に神経を尖らせます。
特徴①:とめどなく話しているか、キャッチボールをしようとしているか 特徴②:声の高低、強弱、スピード 特徴③:ニーズを自ら言えるか、ニーズ発信に援助が必要か
上記の通り。
電話では全ての情報を把握できませんし、ニーズの深掘りも難しいです。しかし大事なのは、「クライエントの訴えをよく聴くこと」これです。電話で話していると、ついついニーズが理解できる場合があります。それに表情が見えないので、返答が自分のタイミングになることもしばしばです。
そこでクライエントの話を遮ると、ニーズが「点」でしか理解できず、立体的にとらえることができません。クライエントとしても不完全燃焼に終わってしまうので注意が必要です。
他機関へつなぐ方法
ここまで、インテーク面接の重要性や方法について説明してきました。しかし、どうしても自分の機関では継続した支援が難しい場合があります。その際、他機関へどのようにつなげば良いのか考えていきます。
【補足】本来は、地域共生社会の実現のため「ワンストップ相談」が理想です。しかし現在も縦割り行政が続いており、分野横断的な支援にはまだまだハードルが高い。とはいえ、一つの機関で抱え込みも良くないのは当然です。よって柔軟に他機関へつなぐことが大事ですね。
他機関へつなぐことの意味
他機関へつなぐ際、「自分のところでは対応できないから」とか「ここならなんとかしてくれるだろう」などと、簡単に考えていませんか?それはソーシャルワーカーとして危険信号です。
少し大袈裟ですが、短時間でもクライエントから話を聞き、他機関の情報提供を行なっている以上、専門職としての倫理責任は生じています。ここを理解してつなぐ必要があります。
つなぐポイントは下記をご覧ください。
- つなぐ先の役割や機能を理解していること
- 丸投げではなく確実につなぐこと
上記の通りです。
それぞれ解説します。
つなぐ先の役割や機能を理解していること
これは結構大事ですね。そして意外に表面だけしか理解せず、情報提供しているソーシャルワーカーを見ることがあります。
理解せずにつなぐとどうなるか、下記のように考えました。
・一部しか対応できず、情報提供止まりになる ・「ここでも対応できない」と言われ、結果たらい回しにされる ・クライエントおよび他機関から不信感を持たれる
上記の通り。
特に不信感を持たれてしまうと、別のケースでも支障をきたします。やはりつなぐ先の役割と機能は最低限理解しておき、わからない場合は調べてから、後日クライエントへ返事をするなど配慮が必要です。
丸投げではなく確実につなぐこと
前の事例でもあった通り、「これ連絡先です」みたいな、電話番号だけ情報提供するのはあってはならないことですね。
さらにつなぐ先の他機関に対して、「あとはよろしく」というつなぎ方もご法度です。
丸投げをしないための、大事なことを3つ挙げます。
①つなぐ先には、「主訴」「ソーシャルワーカーが感じる課題」「誰がどのように相談に行くか」を伝える ②クライエントには、「担当者」「相談できる内容」をわかりやすく伝える ③クライエントとつなぐ先との仲介として連絡を入れたり、必要に応じて同行したりする
一番強調したいのは、③の「ライエントとつなぐ先の間に連絡を入れたり、必要に応じて同行したりする」です。確実につなぐことが重要です。連絡先を伝え、他機関にも情報提供をしたが、肝心なクライエントが相談に行かなければ支援が中断してしまいます。それを防止するためにも、同行訪問するなどして確実につなぐことが大事です。
注意:とはいえ、クライエントが何らかの理由で支援を中断したい場合があります。また気持ちの整理がつかず、他機関へ相談に行くのを躊躇うことも予想されます。その際は無理をせず、クライエントの気持ちに寄り添い、丁寧に話を聴くか他機関との関係性構築を仲介するかなど、別の視点でアプローチすることが求められます。
まとめ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ではこの記事のまとめです。
インテーク面接では下記の方法が必要です。
- 丁寧に聞いてくれる
- 問題を整理してくれる
- 必要な情報や他機関につないでくれる
さらにインテーク面接において、心がけることは下記5つ。
- クライエントにとってくつろげる環境設定(援助関係)
- 「事実」と「感情」を分けながら聴くこと
- クライエントから自然に言葉が流れてくるような傾聴
- 心理的・精神的サポートを心がける
- 自己決定や強みを阻害しない情報提供を行う
相談内容によっては、自分の機関では継続支援できない場合があります。その際、他機関へつなぐことが必要です。
- つなぐ先の役割や機能を理解していること
- 丸投げではなく確実につなぐこと
上記の2つを意識しながら、つなぐことが重要ですね。
僕がとらえるインテーク面接は、クライエントが「相談してよかった」と思ってもらえるような面接を実施することです。傾聴だけでなく、くつろげる場面の設定やクライエントの利益になる情報提供が求められます。
やはり、インテーク面接はソーシャルワークの醍醐味だな、とこの記事を書きながらつくづく思いました。またインテーク面接について深掘りした際は、ご紹介しますので一読いただけると幸いです。
では、今回はこの辺で😌