【コミュニティソーシャルワーク】ゼロから始める地域支援の手順書【結論:とにかく顔を見せることから始めましょう】
こんにちは、タカヒロです。
普段は地域包括支援センターで社会福祉士として働いています。ほかに県社会福祉士会副会長、後見受任、基礎研修担当理事兼講師、外部委員(介護保険審査会など)、Webライターとして活動しています。元々、大手アパレルメーカーのバイヤーから社会福祉士に転身した、異色の経歴の持ち主です。
今回のテーマである「地域支援」ですが、バイヤー時代のマーケティング経験が活きていると思います。理由は下記の通り。
- 理由①:リサーチ→地域文化や住民が望んでいることを発掘
- 理由②:商品開発→モルックやeスポーツなど斬新さを取り入れる
- 理由③:広報→ICTを活用し持続可能な事業へ発展
やみくもに「地域支援」と題して、地域住民に押し付けるようなことは本末転倒です。とはいえ、地域のニーズばかり拾い上げていては参加者も継続性も失われます。やはり「地域支援」とは、マーケティング理論も駆使しながら戦略的に取り組む必要があります。
解決できる悩み
この記事を読むことで、下記の悩みを解決できます。
- 悩み①:高齢者サロンについて、何から始めればいいのかわからない
- 悩み②:地域住民からの相談件数が増えない
- 悩み③:地域が抱えるニーズや強みがわからない
上記の通り。そもそも「相談件数が増えない」のは地域包括支援センターとしては悩みどころです。その悩みに対して高齢者サロンをうまく活用できると、相談件数はもちろんのこと、地域の活性化にもつながります。
もくじ
※この記事は15分程度で読むことができます。
ゼロから始める地域支援の手順書
まず、下記のツイートをご覧ください。
モルックやeスポーツなどを高齢者サロンで導入するにあたり、「なぜその方法を選んだのか」を言語化できなければいけませんね。
・地域の現状
・課題の抽出
・ニーズ把握
・方法検討とマッチング
・予測される効果上記のような行程で進めると理解者や協力者が増えて、新たな事業に発展します😌
— タカヒロ🐧社会福祉士 (@ta_hi_ro_30) May 25, 2022
やはり「マーケティング理論」にリンクします。まずは市場調査からですね。そして最も大事なのは、「その方法が介護予防や地域の活性化につながっているか」ということ。楽しみも大事ですが、娯楽性だけでは専門職として関わる意義が薄いです。逆に意義があれば、行政や企業に根拠を持って説明でき、持続的な事業になったりマネタイズにつながったりします。
なぜ地域支援が必要なのか
そもそも「なぜ地域支援」が必要なのか、紐解いていきます。
地域支援に取り組む目的はなんでしょうか?僕はまず「地域包括ケアシステムの構築」が頭に思い浮かびます。厚労省のホームページから、一部抜粋しました。
日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。65歳以上の人口は、現在3,500万人を超えており、2042年の約3,900万人でピークを迎えますが、その後も、75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。
このような状況の中、団塊の世代が75歳以上となる2025年(令和7年)以降は、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。
このため、厚生労働省においては、2025年(令和7年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
皆さんご存知の通り、日本の少子高齢化は凄まじい勢いで進んでいます。働き手(生産人口)が減るばかりで、高齢者はどんどん増えている。しかも認知症や身寄りのない高齢者も増えており、支援の在り方も検討する必要があります。
データから見る少子高齢化
下記のデータは、内閣府の「高齢化の推移と将来推計」です。
データの内容は下記の通りです。
- 2025年からみるみる総人口が減り続けます
- 逆に高齢化率は増えていきます
- 生産人口が減るので、経済が低迷します
結論:「支援できる人もサービスもないから、自分たちでなんとかしてね」
国はここまで極端に言わないでしょうが、「地域内でどう支え合うか」という議論は、今後ますます活発になると思います。
地域支援の難しさ
少子高齢化の深刻さに伴い、いわゆる「地域力」を高めていくことが重要だと理解しました。しかし、そう簡単に地域支援に取り組めるほど甘いものじゃないですね。
僕が地域支援を行う上で、難しさを感じる課題は下記の通りです。
- 課題①:単身世帯の増加
- 課題②:男性参加率が低い
- 課題③:自治会や民生委員の高齢化
上記の通り。以前のように「集まれー!」で来れるような単純な状況ではありません。参加者を募る前に、個別的な支援が必要な方が増えています。また、担い手不足も深刻ですね。「地域支援」では参加者を集める(集客力)だけでなく、地域を丸ごと支援していく必要があります。
さて後半では、実際にどのような地域支援をソーシャルワーカーとしてできるのか解説していきます。
とにかく地域に顔を見せることから始めましょう
地域支援で一番大事なのは、誰もがため息をつく企画力でも、ミスがない実行力でもありません。もっと簡単なことから始めましょう。
結論:とにかく地域に顔を見せること
上記の通り。ただ、やみくもに顔を見せればOKではありません。
この章では、今から地域支援を考えている方に向けて、僕が取り組んだことをお伝えします。とはいえ、僕は地域包括支援センターで働きはじめてまだ10ヶ月です。それでも高齢者サロンに行くと声をかけてもらえますし、個別に相談も受けます。
現在の僕のポジショニングでは、地域支援を行うためにまず土壌づくりが必要だと考えました。そして最近、ようやく芽が出始めた感じです。
では、ソーシャルワーカーとしてどのような企画を考え実行したか、少しでも参考になれば幸いです。
社会福祉士として何ができるか考えてみた
「地域支援」についてぼんやり考えていたときに、参考になったのが同僚の保健師でした。その考えをツイートしたのでご覧ください。
毎月9ヶ所の高齢者サロンでミニ講座を開催。内容は成年後見について。サロンで開催しようと思った理由は、介護予防でサロンに関わってる保健師をモデルにした。総合相談の件数が多いのがその保健師。ほぼサロンで受けている。参考になる部分を活用して、自分の課題解決に転換していく。これオモロい😌
— タカヒロ🐧社会福祉士 (@ta_hi_ro_30) April 24, 2022
上記の通り。きっかけは「権利擁護の相談件数を増やしたい」という目的。その目的を達成するための場所と方法を探っていました。そこで思いついたのが、「上質な講座を1回だけ行うより、短時間で終わる講座を数多く開催すること」が、相談件数増加にも近づくと考えました。
なぜか??
「権利擁護=タカヒロ」となり、顔を覚えてくれるから
これです。どんなに素晴らしい講座をしても、家に帰って「今日話した人は誰だっけ?」となってはどうしようもありません。それより数をこなすことで「タカヒロさんは毎月来てくれる。話しやすそうだから一度相談してみよう」となれば、「相談件数の増加」さらに「福祉リテラシーの向上」にもつながると思いました。
では取り組んだ内容を、具体的にお伝えします。
権利擁護のミニ講座を開催しました
内容は下記の通りです。
- 場所:承諾得た8か所の高齢者サロン
- 頻度:毎月1回15分程度(テーマは月ごと変更)
- テーマ:権利擁護(主に成年後見制度)
上記の講座を開催しようと思った背景は下記の通り。
「権利擁護における相談のハードルを下げたかったから」
上記の通りです。「権利擁護」と聞くと、何かおどろおどろしいイメージを持たれている方が多い印象です。「虐待」とか「消費者被害」とかですね。成年後見制度も同じで、実際にミニ講座の参加者から下記のような声を聞きました。
- 「弁護士」や「裁判所」と聞くと、お金がかかるイメージ
- そもそも判断能力が低下していることを、隠そうとする人もいると思う
- 手続きも複雑そうで、何を相談していいのかがわからない
上記のようなイメージを払拭できないまでも、相談のハードルを下げることで、「気軽に相談していいんだ」という方向に持っていきたいと思いました。
ミニ講座開催までの手順書
ここでは、「①開催前に取り組んだこと」、「②難しかったこと」、「③成功したこと」について説明します。
結論:どこのサロンも基本「ウエルカム」でした
とはいえ、2か所のサロンには事前に根回しも必要でしたね。開催前に取り組んだことは下記の通りです。
- 直接会って、開催目的を簡単に説明した
- まずはサロンに参加(見学ではなく参加することが重要)
- サロンの開催日を把握し「まずはこの日に開催してもいいですか」と聞いた
「え?当たり前ですよね…」と思った方、確かに当たり前のことです。
しかし意外に、説明を電話で済ませたり、初めてのサロンで雰囲気もわからず一方的に話したり、ということもあります。上手くいくケースもありますが、僕の場合は「①相談のハードルを下げる」ことと、「②権利擁護のリテラシーを高める」という2つの目的があるので、サロンとの関係性構築にも取り組みました。
難しかったこと
15分のミニ講座ですが、やはり難しい場面は多いです。
- むずい①:予定通りに開催できない
- むずい②:たまに笑いが必要
- むずい③:興味あるテーマじゃないと飽きられる
上記の通り。何より、専門的なテーマを「平たい言葉で、かつイメージできるように説明する」というのが、超絶難しいと思いました。とはいえ、これも修行の一つでしょうか。悩みつつ、前向きに捉えています。
加えて今後の展望ですが、「簡単なグループワーク」や「振り返りのクイズ」なども取り入れてみようと考えています。いかに飽きさせず、我がごとのように思ってもらえるか、工夫することが大事ですね。
成功したと思ったこと
開催まで根回ししたり開催しても難しいことが多いですが、成功体験もあります。
結果:権利擁護への相談ハードルが低くなった
上記の通り。2022年4月から開始しまだ2ヶ月程度ですが、毎月延べ100名の方に話をしています。言い換えれば、「毎月100名の地域住民に会える機会」と捉えます。よって、自然と相談数も増えることにつながります。成功内容は下記の通りです。
- 成功①:正直内容は覚えていないかもしれないが、顔と名前は覚えてもらえた
- 成功②:地域の課題(担い手不足や閉じこもりなど)を聞く場面が増えた
- 成功③:モルックやeスポーツなど、新しい企画も話しやすくなった
ミニ講座が地域の福祉リテラシー向上に寄与し、権利擁護以外の相談も受けるようになってきました。何より、地域の中で「相談できるタカヒロ」という、嬉しいレッテルを貼ってくれるのはありがたいことです。このミニ講座から、地域ニーズの発掘や地域支援につながりそうだと感じています。
まとめ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は「ゼロから始める地域支援の手順書」というテーマでお伝えしました。簡単にまとめたのでご覧ください。
今後、少子高齢化がますます進みます
将来、直面する地域課題は下記の通り。
- 2025年からみるみる総人口が減り続けます
- 逆に高齢化率は増えていきます
- 生産人口が減るので、経済が低迷します
この問題は避けて通れないと思っています。いや包括で仕事をしていると、下記のような地域課題を目の当たりにします。
実感している地域課題
少子高齢化の波は、着実に向かっています。
- 課題①:身寄りのない高齢者が多い
- 課題②:自治会や民生委員の高齢化
- 課題③:訪問介護や施設での介護人材が足りない
これらの課題を実感するからこそ、ソーシャルワーカーとしてどんな地域支援ができるか考えてみました。
権利擁護のミニ講座から地域支援へ
僕が取り組んだ(現在進行中)地域支援は「権利擁護のミニ講座」を開催することです。内容は下記の通り。
- 場所:承諾を得た8か所の高齢者サロン
- 頻度:毎月1回15分程度(テーマは月ごと変更)
- テーマ:権利擁護(主に成年後見制度)
ズバリ目的は、「権利擁護における相談のハードルを下げたかったから」です。それが、地域の福祉リテラシーの向上につながると考えました。
やってみて思ったこと
開催前に直接会って説明したり、時には笑いを誘ったりと、あの手この手で参加者の注意を引かなければなりません。でもそれは最初の頃の話。2ヶ月も経てば、個別相談も増えてきました。ミニ講座の成功体験は下記の通りです。
- 成功①:正直内容は覚えていないかもしれないが、顔と名前は覚えてもらえた
- 成功②:地域の課題(担い手不足や閉じこもりなど)を聞く場面が増えた
- 成功③:モルックやeスポーツなど、新しい企画も話しやすくなった
上記の通り。一つのミニ講座がさまざまな地域支援に波及すると実感しています。
地域の課題は地域住民から聞くことで始まる
下記ツイートをご覧ください。
やはり、地域のニーズは地域住民から聴くことが一番の近道であり、現実的なものとなる。自分たち専門職が地域診断したり、アセスメントしたりすることは確かに大事だが、地域住民抜きのアセスメントはただの妄想でしかない。よって地域に出向く回数を増やし、相談のハードルを下げることが最も重要。
— タカヒロ🐧社会福祉士 (@ta_hi_ro_30) June 2, 2022
自分のツイートですが、改めて共感します。そのためには、地域に顔を出すことを増やす必要があります。
「とにかく顔を見せる」です。
どんなに講座内容を完璧なものに仕上げても、年に1回程度では地域住民に覚えてもらえません。覚えていない職員に対して、自分自身の相談ならまだしも、他人の相談をしようと思うでしょうか?やはり、「相談しやすい関係性を創る」ことが大事ですね。
参考図書の紹介
最後に参考図書のご紹介です。
ご紹介したいのは「ソーシャルデザイン実践ガイド」です。これは、まだ道(ノウハウや資源自体)がないところに、地域の声を聞いて共に社会資源を創り上げていくガイドブックみたいな本です。これから地域支援に取り組まれる方や行き詰まっている方に向けた良書です。下記カードからご覧ください。
では、今回はこの辺で😌